イントロダクション

家庭の事情で高校中退してから16年間、小劇場の舞台に立ってきた私だが、とうとう30歳で進学を決意。舞台に立ちながら大学に通っていた。だが、子どもが産まれ生活は一変。直面する現実の中で自分の生き方を疑い始める。俳優であり、学生であり、母である私自身の葛藤と家族を記録したドキュメンタリー映画。
第2回立教大学映像身体学科学生研究会スカラシップ助成作品
● 2021年 第19回うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテスト審査員柘植靖司賞受賞
https://www.umic.jp/eigact/2021/kekka.html
● 2021年 神戸インディペンデント映画祭ノミネート
https://www.youtube.com/watch?v=G9d3cs7BXXU
● 2022年 SeishoCinemaFes 5th コンペティション中長編部門グランプリ受賞
● 第44回ぴあフィルムフェスティバル コンペティション部門 PFFアワード2022年ノミネート
第19回
うえだ城下町映画祭
主制作映画コンテスト
審査員柘植靖司賞
受賞




2022年
SeishoCinemaFes5th
中長編部門グランプリ
受賞
2021年
神戸インディペンデント
映画祭ノミネート


第44回
ぴあフィルムフェスティバル
コンペティション部門
PFFアワード2022
ノミネート


監督コ メント
「どうして私は上手く行かないの?
育児と仕事、みんなどうしてるの?」
この答えを探しに作品は出発しました。
初めてドキュメンタリー映画の制作に挑戦したため、手探りでカメラをまわし、自分と家族、職場、大学を毎日撮影しました。
編集で自分を見つめる中で「この社会で自分らしく生きていくこととは?」という新たな問いが生まれました。職業や性別に関係なく、そうした生き方に対する問いを持つ方々に見ていただければ幸いです。


「選べないけど捨てきれないもの
次々めぐります。」
50 代男性(うえだ城下町映画祭アンケートより)
コメント
取り繕うことのない身体と感情が、とても生々しいです。
主人公である作者が育児と大学と芝居にギリギリまで追い詰められていて、それを自身が回すカメラと音響がギリギリまで追い詰めていくので、異様な迫力があり、次に何かが起こるのではないか(起こってしまうのではないか)と、ちょっと怖くもありました。77分間、誰も笑わない映画を久々に見ました。
万田邦敏(映画監督/立教大学教授)
本来、私はドキュメンタリー映画というものにあまり興味はなく、制作に関わったことも、制作しようと考えたこともありませんでした。
練りに練った脚本、入念な制作準備、そして撮影現場でのスタッフ、キャストの共同作業による悪銭苦闘…許される限り、何度も何度も納得が行くまでやり直す。それが私にとっての映画制作でしたから、ぶっつけ本番のドキュメンタリー撮影というものに、ある種の怖さを感じていました。
人は誰しも日常の生活で意識、無意識の内に、自分というものを演じていると思います。職場での自分、家族の中での自分、友だちや恋人の前にいる自分。みんな、その時々の自分を演じています。ただ、誰も、自分にカメラが向いているとか、記録されているとか、それを観る観客がいるとは思っていません。しかし、この作品の主人公はその日常の生活でカメラが回っていることを知っています。しかも、主人公はプロの役者であり、このドキュメンタリーの監督でもある。作品を拝見していて不思議な感覚がありました。
母親としての田中夢さん、妻としての田中夢さん、学生であり俳優である田中夢さん…。どの田中夢さんにも、脚本があるわけでもなく、ぶっつけ本番の日常を必死で生きている田中夢さんだと思います。しかし、それを撮影している田中夢さんがいる。被写体になっていることを知っている田中夢さんがいる。
ある著名な監督が、『優れたドキュメンタリーはフィクションに近づき、優れたフィクションはドキュメンタリーに近づく』と言っていますが、この作品は、まさにドキュメンタリーとフィクションの狭間にあるのでは、という面白さを感じました。
正直に言いますと、「こういう表現方法があったか、『アクト』かあ、…してやられたな」と思った次第です。これがこの作品を『柘植賞』に選ばせて頂いた最大の理由です。 生活していくことも、夫婦関係も、子供を育てることも、大変だよな、と共感しながら、少しだけ残念だなと思ったのは、田中夢という人がこの生き方を選択し、生きている日々の喜びのシーンがもう少しあっていいのでは、と思いました。そうした瞬間の田中夢さんが描かれることで、もっと田中夢さんの生きざまが観客に近づくのでは、と思いました。
最後に、この映画祭に俳優賞があるのならば、息子さんのちがやクンは間違いなく主演男優賞です。 田中夢さんの今後のご活躍を楽しみにしています。
柘植靖司(映画プロデューサー/上田城下町映画祭自主制作映画コンテスト審査員)
目の前に繰り広げられる孤独に心が捕まりそうになる瞬間「ああ!このひと(田中夢監督)は俳優でもあるんだった!」と思い起こされ、ぐにゃっと世界がゆがむ。こんな不思議な体験をこの映画では何度もしました。
自意識と無意識のはざまをかき混ぜられる感覚をぜひ体験してほしいです。そして愛おしい息子氏は必見です!
稲毛礼子(俳優/ママさんコーラス演劇うたうははごころの会/『アクト』出演)
山本尚樹(大学講師/発達心理学)
自らの人生を生きること、そして他人の人生を共に生きること。人はそれをなんて滑稽に演じているんだろうか。田中夢の作品はそうした人の生を映し出している。
普段は、学外での学生個々人の生活は意識しておりませんが、大学生活と日常生活のつながり、そして日常生活の中での母親としての役割と学生・俳優を両立させていくことの大変さを強く感じました。立場の違う人々が各々の日常の1部を共有していること、それらがそれぞれの私生活に様々な形で関与し環境となっていることを再認識いたしました。特に、子供がいて共働きの方には観ていただきたい作品です。
増田知尋(心理学者/大学教員/『アクト』出演)
砂連尾理(ダンサー/振付家/大学教員/『アクト』出演)
この作品で夢さんは自身が俳優であること、大学生であること、また家庭の中では妻であり幼い子供の母であること、そして生まれ育った家に帰れば娘であり、ある困難さを抱えた弟の姉であること、それら彼女が生きるステージで巻き起こっている様々な葛藤をカメラの前で赤裸々に晒していきます。
カメラを自分に向けるといった、ある種の暴力的な行為を通して、彼女は作為と偶発性の間を揺れながら、それはまるで踊るように、自身の身体に抱え持つ様々なアクトを剥ぎ取りアクトの手前の身振り、あるいはその先にあるアクトを見つめていきます。映画の形態はドキュメンタリーなんですが、あれっ、これってフィクションなの?と、ドキュメントとフィクションがめまぐるしく反転しあう、そんな錯覚を覚える作品で、表現に携わる方だけでなく、自分にラベリングされてしまっている様々な属性(自ら選んだもの も含め)を抱えながらそれらと共にどうやって生きていこうかと考えている方に是非見ていただけたらなと思います。

監督プロフィール
田中夢(たなかゆめ)
俳優。演劇、映画、ダンス分野で活動中。
主な出演作品
【映画】
2013年「タートルハウス」久保田誠監督(福井映画祭2013審査員特別賞/調布映画祭2014奨励賞)
2021年「ボディ・リメンバー」山科圭太監督(サンフランシスコインディペンデント映画祭ノミネート)
【演劇】
マレビトの会、遊園地再生事業団、モメラスなど多数出演
2020年から舞台芸術家たちで結成した子ども向けオンラインパフォーマンスの会「あっとほーむ・シアター」運営・出演
田中夢プロフィールページ
『アクト』
第2回立教大学映像身体学科学生研究会スカラシップ助成作品
2021年/77分/16:9/日本/ドキュメンタリー
撮影/田中夢 山科圭太 川部良太 吉澤慎吾 森田麻美
協力/マレビトの会 ママさんコーラス演劇うたうははごころ
立教大学映像身体学科砂連尾ゼミ 松田正隆 砂連尾理
立教大学現代心理学部映像身体学科 東京芸術劇場 レトル
フェスティバルトーキョー2018 スタジオニブロール プリコグ
ミクニヤナイハラプロジェクト 遊園地再生事業団 studiOpera
石田智也 きむらゆき 阿部初美 三坂知絵子
万田邦敏 山田達也